家族が同じ世界で活動しているからこそ・・・
★★★松本紀保さん 
前編

 
内容は発行した時点での内容です
 

プロフィール


★プロフィール

松本紀保(まつもと きお)

女優。目黒区在住。
歌舞伎俳優 九代目松本幸四郎の長女、弟は市川染五郎、妹は松たか子。1994年『チェンジリング』で初舞台。以後『ヴェリズモ・オペラをどうぞ!』『マトリョーシカ』『夏ホテル』『ヴァニティーズ』『ラ・マンチャの男』など舞台出演多数。
昨年行われた詠み芝居『源氏物語 百花撩乱 うき身を醒めぬ ゆめになしても〜愛の罪〜』の紫式部役でその存在感を確かなものにした。2月には東京グローブ座での公演『殺人者』に出演。




 




目黒区にお住まいの松本紀保さんにインタビューしました。
前号に引き続きインタビュー後半を掲載します。



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<子供の頃は・・・>

「小さい頃、歌舞伎の下座音楽が入ったレコードをかけてお芝居ごっこをして遊んでいました。弟(染五郎)が仕切って、私と妹(松たか子)はそれに付いていくような感じで。洋服の上から大人の着物を着て帯を締めて、お引きずりのようにしてやってみたり、母のパウダーを顔にパンパンはたいて口紅を塗りたくって隈取りのような顔を作ったりしていました(笑)。

大人になって部屋を整理した時に子供の頃の本が出てきたのですがそれを見ると、将来何になりたいですか?という欄には、歌手とかお花屋さんとか色々なものに丸を付けていました。芝居ごっこをしてはいましたが、役者になるという意識はその頃まだなかったように思います。歌舞伎役者の家庭に生まれたので、子供心に『役者は男の子のもの』というのがあったんでしょうね。

祖母や母と父(幸四郎)の芝居を観に歌舞伎座に行ってもロビーでアイスクリームを買ってもらったりして、自分にとっての遊び場のような感覚でした。そういう意味では劇場や芝居というものには、自然に慣れ親しんでいったのかなと思います」。



<紀保さんから見た家族>

「初舞台以降多くの作品で家族共演する機会をいただいていますが、同じ舞台をやっている時は身内という感覚はあまりないです。
でも、他の人が気付かないようなことを感じ取る時はありますね。二言三言交わす言葉で分かり合えるというのは身内ならではかもしれません。同じ世界で活動しているからこそ良い刺激を受け合っています。

父(松本幸四郎)は、好奇心のかたまりのような人です。私のイメージでは父ぐらいの年齢になると今まで築いてきたものや自分の考えをなかなか動かせないような気がするのですが、自分の意思を持ちながらも新しい感覚を受け入れる柔軟さを持っているところがすごいですね。父から見たらまだまだ駆け出しのような私にも対等に向き合ってくれますし、しかも対抗意識も持ってくれるのが嬉しいです。それは私たちに限らず共演者の方に対しても年齢は関係なく同じ目線で見ているので、そういうところを尊敬します。

母(藤間紀子)は、身近な存在だからこそ厳しいことも言ってくれるし温かい言葉もかけてくれます。家族みんなが母を頼っているので、まさに家族のかなめですね。私たちがグジグジ言っていてもただ黙って聞いてくれますし、どんなに大変な時でも家の中がじめっとしないのは母の持ち前の明るさと前向きな姿勢によるものだと思います。

弟(市川染五郎)は自分で企画したり何かをプロデュースしたりするのがすごく好きです。自分のやりたいことに突き進む姿勢にはすごく刺激を受けますし、応援したいなと思います。父や弟は、たくさんの情報を色々な所から集めてくるので驚かされる時があります。

妹(松たか子)は私が悩んだりした時に母の次に相談する相手ですね。特にこの世界に入ってから2人で話す機会も多くなりました。家族に甘える部分ももちろんありますが、テレビや舞台などで忙しい毎日を過ごしていても、浮ついたところがなく常に冷静に自分を見ていて弱音をはかないところは姉から見てもすごいなぁと思います」。


<これから・・・>

松本幸四郎さんは歌舞伎役者として歌舞伎の舞台を務めるだけでなくテレビなど多方面で活躍している。家族それぞれも互いを刺激しあい、役者としてだけでなく創作活動などにも意欲的に取り組んでいる。

幸四郎さんが立ち上げた演劇企画集団「シアターナインス」「梨苑座」の公演やライフワークとなっているミュージカル『ラ・マンチャの男』では最近長女である松本紀保さんが演出補としても携わっている。

「私はまだやっとこの世界のスタートラインに立てたのかなという思いがありますので、まだまだ父には私が次の段階に行くまで次の世代のことは考えずに頑張って欲しいですね。役者としてもスタッフとしてもサポートと言う意味では喜んでさせていただきますが、気長に機が熟すのを待って欲しいと思います」。



<『ラ・マンチャの男』>

紀保という名前は『ラ・マンチャの男』のドン・キホーテから取ったという経緯もあり、ことさらこの作品には思い入れがあるのでは・・・。

「前回の公演から演出補として参加させてもらっています。中に入っていると今まで見えなかったことが色々見えてきて、出演している時よりも冷静に見られるので改めてこの作品の素晴らしさを感じています。自分もこの作品にちなんだ名前をつけていただきましたので、これを誇りにも思うし、この名前に恥ずかしくない生き方をしていきたいと思います」。

 




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取材協力店





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